【ピンこれ】ideal-tek SS SA 細長くてコシがやわらかく、液浸標本の取り扱いに重宝するピンセット
【ピンセットこれくしょん】手持ちのピンセットを一本ずつ紹介していくシリーズ
第3回は液浸標本のような取り扱いにやさしさを必要とする作業に重宝するピンセットです。
ideal-tek社製SSM型SA素材 テンション計測値46g
※テンション値は計測の仕方や個体によって差があります。参考程度のものです。
このSS型と呼ばれるピンセットの形状は、全体が細長いことが特徴です。通常の精密ピンセットの全長は120mm程度ですが、SS型は135~140mmくらいあります。また、コシがとてもやわらかくて繊細な作業が可能です。いっぽうで、力を入れすぎると先端がよじれてズレることがあるので、精密さを必要とする作業には向かないこともあります。ピンセットの世界で“繊細”と“精密”は両立しないことがあります。
このideal-tek社のSA素材(オーステナイト系のステンレス鋼)のものは、SS型の中でも特にコシがやわらかく、テンション値(先端をとじ合わせるのに必要な力をgであらわしたもの)は40g台ほどしかありません。
また、細いスクリュー管にも入れやすい形状であります。なので、私は繊細な扱いを必要とする液浸標本の取り扱いに重宝するピンセットとして使用しています。
ちなみに、SS型は大好きな形状で、派生型を含めて上図のように収集してしまっています。ピンセットこれくしょんは、恋のような病のような・・・理性を狂わせてしまうほどのいとおしさです。
【ピンこれ】Dumont 5 Carbon steel 学生の頃に初めて買った炭素鋼製ピンセット
【ピンセットこれくしょん】手持ちのピンセットを一本ずつ紹介していくシリーズ
第2回は学生の頃に初めて買ったピンセットです。
Dumont社製5型Carbon steel素材 テンション計測値105g
※テンション値は計測の仕方や個体によって差があります。参考程度のものです。
大学の学部1年生(いまから17年くらい前!)の頃に、当時は渋谷にあった志賀昆虫普及社で初めて買ったピンセットです
Dumont(デュモン)社はスイスのピンセットの老舗で、精密ピンセットの世界トップメーカーです。精密ピンセットは時計製造・修理に使われるものを、ほかの分野でも流用しているのが現状です。スイスの複数のメーカーはこの分野で他国の追随を許さない技術を保有し、日本のメーカーは残念ながら遠く及びません。とくにDumontは形状やそれぞれ特性のちがう素材をつかって多様なピンセットを作っています。
この5番と呼ばれる形状は、保持部から細い先端部が伸びていて、ピンセットの中でも最も鋭い先端部をもっています。顕微鏡の下で行う作業などでは、このような形状のピンセットが視野を妨げることがなく、使いやすいのです。
また、Carbon steel(炭素鋼)の素材は、日本刀と同じような焼き入れのなされた鋼のことで、非常に硬いのが特徴です。炭素鋼製のピンセットの先端は、ごく細く鋭く研ぎあげても掴む対象に負けて曲がりにくいので、昆虫学分野では顕微鏡下で行う解剖作業などで使われます。弱点は腐食しやすく、すぐに錆が出てしまうことです。また、磁気を帯びやすい(磁性が強い)ので、精密機械をいじる分野などでは敬遠されることがあります(形態観察を目的とした昆虫の解剖では磁性が問題になることはほとんどない)。
人生で初めて自分のお金で買ったこのピンセットは、いまでも大切に使っています。少し短くなってきてしまい