ピンセットこれくしょん

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【ピンこれ】KFI K-3GG SUS304 みんなが愛する費用対効果抜群のピンセット

【ピンセットこれくしょん】手持ちのピンセットを一本ずつ紹介していくシリーズ

第4回は初心者から上級者までみんなが愛する費用対効果抜群のピンセットです。

 

幸和ピンセット工業社(KFI)製K-3型SUS304素材 テンション計測値125g

 ※テンション値は計測の仕方や個体によって差があります。参考程度のものです。

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 幸和ピンセット工業社は、葛飾に町工場を構える国産ピンセットの最大手メーカーです。ピンセットの金型を自社で作る技術を持っていて、この会社の作るピンセットの用途・形状は実に多様です。

 なかでもこのK-3GGは昆虫学分野では業界標準のピンセットではないかと思ってしまうほどに普及し愛用されています。その理由は、昆虫の標本作りから飼育作業にいたるまで、細かい作業にほどよく適した形状と、お求めやすい価格(1000円で十分におつりが来る)が魅力だからです。生物系の学生さんなら実習で使ったり、研究室に何気なく転がっているピンセットがこれだということも少なくないでしょう。

 

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 このメーカーのピンセットは定番の型番のものでも常に改良を続けていて、最新のロットのものは明らかに品質が上がっています。

 すでにこのK-3GGをお持ちの方は、ピンセットの刻印とバネ板の形状を確認してみてください。私の手元にある15年くらい前の古いロットのもの(写真上)と2016年に購入した最新のロット(写真下)を見比べてみます。古いロットのものでは刻印に記載されている素材が“18-8 STAINLESS”となっています。最新のロットではこれがSUS304になりました。18-8ステンレスとSUS304は全く同じステンレス鋼の素材のことを指しています。素材が変わったわけではありませんが、刻印のよってロットの新旧が分かる指標となります。

 注目すべきはバネ板の方で、古いロットのものでは板厚の変化によって形成される凹凸がピンセットの外側にあるのに対し、最新のロットではこれが内側になっています。つまり、バネ板の裏表が逆になっているのですが、このおかげで最新のロットのものは外側のでこぼこ感がなくなって違和感のないさわり心地になりました。また、このメーカーのこだわりの一つでもあるバネの効き具合も改良されているようで、筆舌に尽くしがたい絶妙さが最新のロットにはあります。

 

 K-3GGはたしかに使いやすいピンセットですが、先端の仕上げは少し粗く、新品のままの状態ではごく精密な作業には向きません。大型の昆虫の標本作りには十分に使えますが、体長5mmにみたないような微小な昆虫の標本整形には厳しくなります。

 

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 写真上はこのピンセットの先端部を写したもので、上が新品の状態で、下が砥石や紙やすりで研いで調整したものです。ピンセットを研ぐことは意外と簡単で、ちょっとしたことで格段に使いやすくなります。

 ピンセットの研ぎ方については、また後日にでも詳しく懇切丁寧にしつこく無理矢理お伝えする記事を書きたいと思います。

【ピンこれ】ideal-tek SS SA 細長くてコシがやわらかく、液浸標本の取り扱いに重宝するピンセット

【ピンセットこれくしょん】手持ちのピンセットを一本ずつ紹介していくシリーズ

第3回は液浸標本のような取り扱いにやさしさを必要とする作業に重宝するピンセットです。

 

ideal-tek社製SSM型SA素材 テンション計測値46g

 ※テンション値は計測の仕方や個体によって差があります。参考程度のものです。

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 このSS型と呼ばれるピンセットの形状は、全体が細長いことが特徴です。通常の精密ピンセットの全長は120mm程度ですが、SS型は135~140mmくらいあります。また、コシがとてもやわらかくて繊細な作業が可能です。いっぽうで、力を入れすぎると先端がよじれてズレることがあるので、精密さを必要とする作業には向かないこともあります。ピンセットの世界で“繊細”と“精密”は両立しないことがあります。

 このideal-tek社のSA素材(オーステナイト系のステンレス鋼)のものは、SS型の中でも特にコシがやわらかく、テンション値(先端をとじ合わせるのに必要な力をgであらわしたもの)は40g台ほどしかありません。

 

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 また、細いスクリュー管にも入れやすい形状であります。なので、私は繊細な扱いを必要とする液浸標本の取り扱いに重宝するピンセットとして使用しています。

 

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 ちなみに、SS型は大好きな形状で、派生型を含めて上図のように収集してしまっています。ピンセットこれくしょんは、恋のような病のような・・・理性を狂わせてしまうほどのいとおしさです。

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